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亜鉛を摂取し健康な体を作る!知っておきたい亜鉛の力とは?について

執筆者: 藤田 悠花(皮膚科医)
[記事公開日] 2022-12-13 [最終更新日] 2023-02-22
亜鉛とは体に必要なミネラルの一つです。亜鉛は体の成長やさまざまな機能にたずさわっており、とても大事な役割を持っています。そのため体内の亜鉛が低下すると体にさまざまな症状が出現してしまいます。この記事では亜鉛の働きや低亜鉛血症について紹介します。
[ 目次 ]
亜鉛を摂取し健康な体を作る!知っておきたい亜鉛の力とは?について

亜鉛の働き

亜鉛は電池などに用いられる金属として有名ですが、人間の体の中にも存在しているミネラルの1つです。健康な成人の体内では1.5g〜3g程度が正常量で、血液中の濃度としては80〜130μg/dLが正常範囲とされています。
主な働きとして酵素の安定化と活性化があります。酵素とは体の中で起こる化学反応に必要な成分のことで、およそ300ほどの酵素が亜鉛により安定化や活性化をおこなっています。
亜鉛がたずさわる主なものとして
・身長の伸び
・肌のターンオーバーの正常化、脱毛の予防
・生殖機能の発達、維持
・骨格の発達
・味覚、臭覚の維持
・免疫力の維持
・精神の安定
・肝臓の働きの維持
があり、全身の機能に亜鉛が関係しているため、体の中の亜鉛が低下すると全身に症状をきたしうります。

そのため亜鉛が不足すると以下のような症状が起こります。
・身長があまり伸びない
・肌が荒れやすい
・抜け毛が増える
・傷が治りにくい
・口内炎げできやすくなる
・生殖機能の低下
・骨が脆くなる
・味や匂いがわかりにくい
・風邪をひきやすい
・動機がする、疲れやすくなる(貧血による症状)
・やる気が出ないことが多くなる

亜鉛欠乏は慢性的な経過で起こるためこのような症状が見られても、最初から亜鉛欠乏を疑うことはあまりありません。しかし、症状の原因が本当に亜鉛の不足によるものであった場合、亜鉛を補充することで症状は改善されるため上記のような症状を認める場合は一度検査をしてみても良いかもしれません。

低亜鉛血症と亜鉛欠乏症

低亜鉛血症とは文字通り体内の亜鉛の量が低い状態であることを指します。血液中の亜鉛の濃度が60〜80μg/dLの範囲内ですと潜在性低亜鉛血症、60μg/dL以下になると低亜鉛血症となります。低亜鉛血症を血液検査で認めた場合、これは亜鉛欠乏症の診断基準の1つとなるため、亜鉛欠乏症の診断となる可能性があります。

亜鉛欠乏症の診断基準
1) 以下の項目を1つ以上満たしている
・亜鉛欠乏と見られる症状がある
・血液検査で血清のアルカリホスファターゼが低値
 (アルカリホスファターゼは主に肝臓で作られ骨の形成などに関与する酵素です)
2) 亜鉛欠乏以外に原因と考えられる病気がない
3) 血清亜鉛の値が60μg/dL未満
4) 亜鉛不足が解消されると症状も改善する
この1〜4の全てを満たす場合に亜鉛欠乏症と診断されます。

○亜鉛が不足する原因
これまで亜鉛の人の体における働きと低亜鉛血症・亜鉛欠乏症についてお話ししました。
それではなぜ亜鉛は欠乏するのでしょうか。

亜鉛が不足する原因は年代などによって変化します。
・乳幼児
乳幼児の亜鉛不足の原因は摂取不足、吸収不全、需要の増加です。
 ・摂取不足
  好き嫌いが激しい、菜食主義の親などが原因で食事が偏ると亜鉛が不足します。
  また、妊娠中や授乳中に母親が過度なダイエットをしていたり亜鉛が不足する食生活
を送っていた場合、母乳中の亜鉛が少なくなるため子供の亜鉛も不足します。
 ・吸収不全
  先天的もしくは後天的に腸からの亜鉛吸収ができず亜鉛不足になり、肛門や口の周り、
手や足の指先の皮膚炎や下痢を起こす腸性肢端皮膚炎という病気があります。先天性
の原因は遺伝子異常、後天性の場合は母親の亜鉛不足が主な原因です。
 ・需要の増加
  乳幼児期は体の成長するスピードが速いためその分必要な亜鉛も多くなります。その
ため相対的に亜鉛が欠乏しやすいのです。

・成人
成人の場合は単なる摂取不足や吸収不全、排泄の増加が原因となります。
・摂取不足
 菜食主義や過度な食事制限が主な原因です。また加齢により食事摂取量が減少したり、点
滴での栄養補充ばかりしているとさらに亜鉛が不足してしまいます。
・吸収不全
 コーヒーやオレンジジュース、カルシウムを多く含む食材などを過剰に摂取すると腸か
 らの亜鉛吸収が妨げられてしまうため亜鉛不足になります。
 また、肝臓の病気や潰瘍性大腸炎などの腸の粘膜が障害される病気などがある場合は亜
鉛が吸収されにくくなるため同様に亜鉛不足となります。その他、一部の薬剤も亜鉛の吸
収を抑制します。高齢の方などは病気も多く、飲まれている薬も多いです。それに加えて
食べ物を消化吸収する力も弱くなっているため亜鉛不足になりやすいです。
・排泄の増加
 肝臓の病気や腎臓の病気、糖尿病などがあると尿からの亜鉛排出が増えてしまうため亜
鉛が不足します。透析をしている方も同様です。また、亜鉛の排泄を促進する薬剤もあり、
その影響で亜鉛が不足することもあります。吸収不全と同様の理由で高齢者の方はこち
らの原因でも亜鉛が不足しやすいです。
 そして激しいスポーツを定期的に行う場合、汗や尿からの亜鉛排出が増加し亜鉛不足と
なります。これはアスリートにしばしばみられる貧血の原因と言われています。

・妊婦、授乳婦
この場合の原因は需要の増加です。
お腹に赤ちゃんがいると赤ちゃんの成長のための栄養も必要となるため必要量が増加します。近年のダイエットブームの影響で必要な栄養が足りてない妊婦さんが増えてきています。亜鉛が欠乏するとお腹の赤ちゃんの成長が抑制されるため注意が必要です。
亜鉛を摂取し健康な体を作る!知っておきたい亜鉛の力とは?について

低亜鉛血症を予防、治療するには

亜鉛欠乏を予防、そして治療する方法は亜鉛を補充することです。

亜鉛を積極的に補充したい場合は、亜鉛が含まれている食べ物を取り入れてかつ吸収を妨げる食べ物を避けましょう。
成人の1日あたりの亜鉛摂取し推奨量は男性で10mg、女性で8mgです。妊娠中や授乳中はこれより2〜3mgほど多く摂取する必要があります。
亜鉛が多く含まれている食べ物は、牡蠣などの貝類やレバー、ナッツやチーズなどです。
吸収を抑制するものはコーヒーやオレンジジュース、未精製の小麦や豆類です。

食事のみでの補充が困難な場合はサプリや薬剤の力を借りましょう。しかし、亜鉛の取りすぎは逆に体に悪影響を及ぼしてしまうため一度病院を受診し検査を受けてからこれらの使用を行いましょう。





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