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「冬季うつ」日が短い秋冬に起きる体の不調…その原因・症状と対策

執筆者: 橘田 絵里香(形成外科医)
[記事公開日] 2023-09-25 [最終更新日] 2023-10-03
日が短くなって寒くなりだすと、どうも、やたら眠くなってしまったり、気分が「どんより」して、その割に「食欲の秋」と言わんばかりに、食欲だけはやたらと出てくる、このような症状に、心当たりはありませんか?
それ、「冬季うつ(ウインター・ブルー)」かもしれません!
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「冬季うつ」日が短い秋冬に起きる体の不調…その原因・症状と対策

寒くなると、なんか気分が落ち込む…それ、気のせいではないかも!

秋も深まり、日が短くなって寒くなりだすと、どうも、やたら眠くなってしまったり、気分が「どんより」して、その割に「食欲の秋」と言わんばかりに、食欲だけはやたらと出てくる。

このような症状に、心当たりはありませんか?

「冬季うつ(ウインター・ブルー)」という言葉を申し上げるとピンとくるかもわかりません。
私の周りに「夏至がピークです!」と豪語する友人がおりますが(笑)この現象、日照時間の長さが関係しています。冬季うつは決して気のせいなどではなく、「季節性情動障害」あるいは「季節性感情障害」ともいわれる、れっきとした「体の不具合」で、春になると良くなってしまいます。

「うつ」と聞くと何やら重苦しい症状を思い浮かべてしまいがちですが、冬季うつと一般的なうつ病には、以下のような違いがあります。
・過食:冬季うつでは特に、ご飯・麺類・パンといった炭水化物や、甘いスイーツなどが食べたくなります。(一般的なうつ病は食欲不振に陥りやすい)
・体重増加:食欲が出るため、体重が増加しやすくなります。(一般的なうつ病は食欲不振により痩せてしまいがち)
・過眠:冬季うつはやたらと眠くなる傾向があります。1日中寝たのにもかかわらず、疲れが取れない感覚があったりすることもあります。(一般的なうつ病は不眠に悩まされることが多いです)
「冬季うつ」日が短い秋冬に起きる体の不調…その原因・症状と対策

日が短くなると…どうして憂鬱になってしまうの?

日が短くことによりセロトニン(自律神経を整え、心身を安定させる)分泌量が減ると言われています。冬は健康な状態であっても、セロトニン分泌量が減ることがわかっています。
日光を浴びる時間が減ることで脳内の「睡眠ホルモン」メラトニン分泌のタイミングが乱れ、体内時計が乱れてしまったり、分泌量が1日を通して高くなり、日中のメラトニン増加により「いくら寝ても眠い」状態になってしまいます。その結果、「自律神経の乱れ」も生じます。

自律神経とは、一言でいうと、人間の「陰陽バランス」を整えている場所のことです。人間、テンションが上がりっぱなしでも、下がりっぱなしでもいけません。動くときは動く、休む時は休む、休むから動くし、動くから休むわけです。こちらを制御しているコントロールセンターが「自律神経」であり、気持ちや活動をアゲる方を「交感神経」、下げる方は「副交感神経」と言われます。人間の活動というものは「陰陽」両方の部分がバランス良く作用してこそ、心身ともに健康な状態が得られます。日照時間が短い時期の憂鬱感は自律神経が乱れることにより、陰陽バランスが崩れることによって生じる部分もあるわけなのです。
「冬季うつ」日が短い秋冬に起きる体の不調…その原因・症状と対策

この時期にできる対策は?

まずとにかく「日を浴びる」ことです。寒いと外に出ることが億劫になりがちですが、屋外に出て陽の光を浴びましょう。曇りがちな地域もあるでしょうが、曇り空でも10,000ルクスの照度が得られます​​。室内照明の照度が300〜2500ルクス程度とのことですから、曇りでも、外に出て光を浴びるようが効果は大きいです。

冬季うつでやたら眠くなってしまう症状は「体内時計」の乱れと書きました。日照時間が短くなる冬は、「時差ぼけ」の状態に近くなります。決まった時間に起き、決まった時間に眠るようにするなど、できる限りリズムの良い日々を送るよう心がけましょう。

炭水化物や甘いものを求めがちですが、タンパク質や脂質もバランスよく取る必要があります。ビタミン・ミネラルなどの栄養素を十分に​​摂取することも大事です。サプリメント等もうまく活用しましょう。

適度に体を動かすことは、いつの時期でも健康に良いものです。長時間座ったままになりがちなデスクワークの場合は、1時間に一度は立ち上がったり、ストレッチしたりするだけでも、軽い運動になります。日中、屋外でのウォーキングは冬季うつの対策としてうってつけです。リモートワークの場合、休憩時間に外を少し歩くのもいいですね!​​

ちなみに「日差しの弱い冬は日焼けをしない」これまた大間違いです。冬は日焼け止めを塗らない人がいるそうですが(!)とんでもないことです。冬であっても相当な量の紫外線が地上に届いてます。きちんと日焼け止めを塗ったうえ、外出する習慣をつけてください。慎重な方は、塗る日焼け止めに加え、飲む日焼け止めを飲まれています。きちんとした日焼け対策を怠らないようにしましょう。

オン・オフのメリハリも大事です。1日の活動を終えたら「きちんと緩める」浴槽にきちんと浸かりましょう。お風呂に入れると炭酸ガスの泡が出る入浴剤を利用しての炭酸浴がおすすめです。

以上、この時期知っておきたい「冬季うつ」の詳しい原因や対策について、お届けいたしました。「うつ」と言いますが、誰もがなりうる病態です。ぜひ今から!予防・対策に努めていきましょう。
「冬季うつ」日が短い秋冬に起きる体の不調…その原因・症状と対策

「お腹の調子がずっと悪い‥‥」それ過敏性腸症候群かも。

執筆者: 永田健(消化器内科医)
[記事公開日] 2023-06-09 [最終更新日] 2023-10-03
「仕事や学校に行くとおなかが痛くなる…」「長い間腹痛が治らない…」このような症状でお悩みではありませんか?腹痛の原因はさまざまで、大きな病気が見つかることもあれば、原因がハッキリしない場合も。原因がハッキリしない代表的な病気に過敏性腸症候群があります。正しく診断し治療に結びつけば、長く悩んでいるその症状は改善する可能性があります。今回は過敏性腸症候群について解説します!
[ 目次 ]
「お腹の調子がずっと悪い‥‥」それ過敏性腸症候群かも。

過敏性腸症候群ってどんな病気?

過敏性腸症候群とは「腹痛と便通異常(便秘や下痢)が関連しあいながら慢性に持続するにもかかわらず、通常の検査ではその器質的異常を認めないという概念の症候群」と定義されています。

もう少し簡単にいうと、便秘や下痢を伴う腹痛症状が長い間続くのに、検査をしても何も異常が見つからない状態をいいます。

胃や腸は、食べたものを消化・吸収し、最終的には便として排出する機能を持っています。何らかの原因でこの「機能」に異常がでてしまうことを機能性障害と呼びます。

過敏性腸症候群は、もっとも代表的な機能性消化管障害です。

日本人の13%が罹患しているといわれ、やや女性に多いと報告されています。10代~20代でもっとも高頻度に発症し、加齢とともに減少します。

腹痛以外にもさまざまな症状をしめし、命には関わることはないですが、発症すると生活の質をいちじるしく低下させます。先進国においては、患者さん個人はもちろん社会全体に及ぼす悪影響が大きいころから、近年問題視されています。

過敏性腸症候群の原因はストレス?

過敏性腸症候群発症のメカニズムはまだ解明されていません。
ストレスによって発症するイメージがありますが、原因は他にもあります。

発症に関連がある項目として
・ウイルスや細菌による感染性腸炎後の炎症
・腸内細菌など微生物の影響
・遺伝もしくは環境要因
・心理社会的ストレス 
などが挙げられ、複数の研究によって報告されています。

症状は腹痛だけじゃない!

過敏性腸症候群の主な症状は腹痛と便通異常(下痢と便秘、もしくは両方)です。良くなったり悪くなったりと、長い間続きます。これら症状は大腸の知覚過敏と運動異常によるものと考えられています。そのほか消化管に関連する症状として、吐き気や嘔吐、胸やけ、食欲不振などがあります。

しかし症状は消化管に限ったものだけではありません。

消化管以外の症状として、頭痛、頭重感、めまい、動悸、疲れやすさなどを合併する場合があります。

また心理的異常として、抑うつ感、不安感、緊張感、不眠、意欲低下などがみられる場合も。

これらの症状によって日常生活に支障をきたす患者さんは多くおられます。生活の質が著しく低下し、学校や仕事など社会生活まで制限され、大きな問題となっています

診断には時間がかかる場合も。まずは消化器内科を受診しましょう!

過敏性腸症候群には国際診断基準であるRomeⅣ診断基準というものがあります。

「くり返す腹痛が、最近3カ月の中で平均して1週間につき少なくとも1日以上を占め、その腹痛が、①排便に関連する、②排便頻度に関連する、③便形状に関連する、の3つの便通異常のうち2つ以上の症状を伴うもの」と定義されています。

ややこしくてわかりにくいですよね。

実際の診療では、医者に問診で症状がどれくらいつづいているか、排便と関連する症状かどうかを確認され、消化管に器質的な異常がないかどうかを検査し、診断されます。

器質的な異常とは、例えば胃や腸の粘膜が実際に荒れている胃腸炎、まれなケースでは潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患。がんも含めてです。

これらを調べるために採血検査、大腸カメラや胃カメラ、腹部エコーやCT検査などを行います。

年齢や具体的な症状によって、どのような検査が行われるかは異なります。血便などがない限り中高生にいきなり胃カメラ・大腸カメラが行われることはまれでしょう。

実際の診療現場では、しばらく経過をみながらエコーやCT検査など低侵襲な検査のみで診断に至ることもあります。

症状がさまざまであるため専門医でなければ判断にこまる場合がおおく、一般内科では診断に至らないことも。適切な治療に結びつけるためにも、消化器内科を受診することが必要です。
「お腹の調子がずっと悪い‥‥」それ過敏性腸症候群かも。

治療はいろいろな角度から!

過敏性腸症候群は一朝一夕には改善しません。

原因を推測し対処しつつ、場合によっては薬で症状の改善を目指します。

まずなによりストレスへの対処が重要です。ただし、家庭環境や学校・職場の社会環境をいきなり改善するのは困難なことがおおいです。自分の力ではどうしようもない状況も多々ありますよね。

自分の中からストレスを遠ざける方法としては、生活習慣の改善が重要です。例えば、症状を誘発しやすい食事として、脂質、カフェイン、香辛料、乳製品が挙げられます。これらを意識的に避けることで症状の改善が期待できます。また食事以外には運動習慣をつけることも有用とされています。適度な運動でストレスを発散していきましょう。

これら生活習慣の改善でも効果が得られない場合は内服治療が必要です。現在はさまざまな薬が登場し、良い効果が報告されています。それぞれ症状に応じた適切な処方で改善が期待できます。

お困りの症状がある場合は、がまんせず消化器内科を受診し、医師の診察を受けましょう。

まとめ

過敏性腸症候群は命にかかわる病気ではないものの、生活の質をいちじるしく低下させる重大な病気です。思い当たる症状がある場合は、ひとりで悩まず病院を受診しましょう。
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