行楽シーズンに気をつけたい「エコノミークラス症候群」
執筆者: 橘田 絵里香 (形成外科医)
[記事公開日] 2023-03-06 [最終更新日] 2023-04-03
[ 目次 ]
普段の生活から要注意! 「ずっと座ってる」のはいいことなし!!
「肺血栓塞栓症で緊急入院した」先日、同い年の友人から、ショッキングな知らせが届きました。弁護士である彼女、水も飲まずにずっと座りっぱなしで長時間のデスクワークをこなしていたのだそうです。これすなわち「エコノミークラス症候群」。狭いエコノミークラスに長時間座ったのちに発症することから、このような名前がついておりますが、何もエコノミークラス利用者に限ったことではありません。長時間、水分や食事を取らずに同じ姿勢のままでいると起こりうる病態なのです。
コロナ禍も落ち着き、これからGW・夏休みと行楽シーズンが始まりますが、旅行に限らず、日々の生活においても十分な注意と対策が必要なエコノミークラス症候群について、今回は詳しく取り上げていきたいと思います。
コロナ禍も落ち着き、これからGW・夏休みと行楽シーズンが始まりますが、旅行に限らず、日々の生活においても十分な注意と対策が必要なエコノミークラス症候群について、今回は詳しく取り上げていきたいと思います。
「二足歩行」な人間ならではの病気!? エコノミークラス症候群の原因・メカニズム
肩が凝ったり、足がむくんだり、というのは二足歩行の人間ならではの症状です。4足で歩いているぶんには、頭も脚も、ほとんど心臓と高さが変わりません。が、二足歩行になったがゆえに、他の生物よりも大きくなった脳を肩で支えなければならなくなり、重力で脚に下がった血液を、心臓まで戻すのに、かなりの距離と高低差が生じる結果となりました。エコノミークラス症候群は主に後者の、脚の血流が関連しています。
実は人間、心臓から出る血管=動脈は心臓からのポンプ効果と動脈の拍動で、全身に速やかに血液が行き渡ります。が、問題は全身に行き渡った血液を心臓に戻す作業。心臓に向かう血管=静脈自体に、動脈のようなポンプ作用はありません。ではどうしているか。周囲の筋肉がそのポンプの役割をしているのです。よく、長寿になりたければ「ふくらはぎ」を揉みなさいと言ったフレーズを耳にすることがあるのですが、これは、ふくらはぎの筋肉が、脚の血流を心臓に戻すにあたり、大きな役割を果たしているからです。
そうしたなか、長時間座ったまま動かないということはどういうことか。座ったままで動かないということは、静脈の「ポンプ作用」を担う周囲の筋肉がほとんど動かないということ。つまり、心臓から押し出され、脚に酸素を運んだ血液が、心臓に戻ってこられなくなる、ということを意味します。血液というのは、停滞すると「固まる」という性質がありますので、座ったまま心臓に戻れず、停滞した血液はやがて「凝固」し、血栓となって、脚の静脈にこびりつきます。先の弁護士さんも、両足に大量の血栓がこさえられていたそうです。これらの「血栓」ですが脚で大人しくしてくれている分にはいいのですが、たまに剥がれて別の場所に「飛び」ます。脚に酸素を運んだ血液は、脚の静脈から肺に戻って酸素を得て、再び脚に戻るというルートを取りますので、脚の静脈から血栓が飛びやすいのは「肺」です。肺にそんなものが飛んできたら、たまったものではありません。突然、胸痛と息切れが起きます。肺の太い血管に、大きな血栓が詰まってしまうと、場合によっては死に至ります。これがエコノミークラス症候群のメカニズムです。
実は人間、心臓から出る血管=動脈は心臓からのポンプ効果と動脈の拍動で、全身に速やかに血液が行き渡ります。が、問題は全身に行き渡った血液を心臓に戻す作業。心臓に向かう血管=静脈自体に、動脈のようなポンプ作用はありません。ではどうしているか。周囲の筋肉がそのポンプの役割をしているのです。よく、長寿になりたければ「ふくらはぎ」を揉みなさいと言ったフレーズを耳にすることがあるのですが、これは、ふくらはぎの筋肉が、脚の血流を心臓に戻すにあたり、大きな役割を果たしているからです。
そうしたなか、長時間座ったまま動かないということはどういうことか。座ったままで動かないということは、静脈の「ポンプ作用」を担う周囲の筋肉がほとんど動かないということ。つまり、心臓から押し出され、脚に酸素を運んだ血液が、心臓に戻ってこられなくなる、ということを意味します。血液というのは、停滞すると「固まる」という性質がありますので、座ったまま心臓に戻れず、停滞した血液はやがて「凝固」し、血栓となって、脚の静脈にこびりつきます。先の弁護士さんも、両足に大量の血栓がこさえられていたそうです。これらの「血栓」ですが脚で大人しくしてくれている分にはいいのですが、たまに剥がれて別の場所に「飛び」ます。脚に酸素を運んだ血液は、脚の静脈から肺に戻って酸素を得て、再び脚に戻るというルートを取りますので、脚の静脈から血栓が飛びやすいのは「肺」です。肺にそんなものが飛んできたら、たまったものではありません。突然、胸痛と息切れが起きます。肺の太い血管に、大きな血栓が詰まってしまうと、場合によっては死に至ります。これがエコノミークラス症候群のメカニズムです。
このような条件に当てはまる方は、さらに御用心!
長時間座っているだけで、もう、誰がなってもおかしくないと申し上げたいくらいなエコノミークラス症候群ですが、
・4時間以上の長時間飛行
・短期間でも頻回飛行機を利用した場合
・高齢者
・肥満
・最近大きな手術を受けた
・妊婦
・ホルモン補充療法中
・経口避妊薬(ピル)を飲んでいる
・がん
こうした要素はさらなるリスクとなりますので、注意が必要です。
・4時間以上の長時間飛行
・短期間でも頻回飛行機を利用した場合
・高齢者
・肥満
・最近大きな手術を受けた
・妊婦
・ホルモン補充療法中
・経口避妊薬(ピル)を飲んでいる
・がん
こうした要素はさらなるリスクとなりますので、注意が必要です。
日々の生活から!対策方法
「じっと座っていないで1時間ごとに立ち上がって動いてください」「水分を摂ってください」と、良く書いてあるこの辺りのみに終始するつもりはございません。もちろんこちらも大事なのですが、「高齢」「肥満」「ピルの内服」がリスクになると書きました。「高齢」とはいえ、同じ年齢で比較しても若々しさをキープしている方、年齢以上に年をとってしまわれている方といらっしゃいます。つまり、この病気は日々の生活環境も影響するということです。日々の生活で血栓をこさえており、長時間のフライトでエコノミークラス症候群に、というケースも想定されます。毎日の生活から、十分に気をつけることが必要なのです。
年齢がリスクになるのであれば、今の若さをキープできるような生活習慣をすることが大事です。そのためには、ありきたりですが、適度な食事・睡眠・運動、まずこれに限ります。
食事はスマートフォンに食事内容を書き込んで、バランスよくとれているか、カロリーオーバーしていないか、足りない栄養素はなにか、チェックできる時代です。どうしても足りない栄養素はサプリメントで補うことができます。アンチエイジング効果のあるサプリメントと共に、検討の余地があります。
年齢とともに落ちてしまう睡眠の質は、運動すること、サプリメントを摂ることなどで改善が見込まれます。
運動は1日20〜30分が理想、ですが、ジムに通ってまとまった時間をとる必要はなく、自宅で家事など、ちょこまかと動くようにする、通勤中に階段を使用する、一駅手前から歩く、など、日々の生活活動レベルを少し上げて、トータルで1日20分なり30分なりになればOKです。
ピル内服のリスクにつきましては、40歳を超えたらエストロゲンを含有していない内服剤に切り替えれば回避できます。婦人科さんで相談しましょう。
そしてもちろん、普段から、1時間以上座りっぱなしという状態はなるべく回避しましょう。水分は喉が乾いてからではなく、こまめに摂りましょう。1日1〜1.5リットルが理想です。
人間、肝心なのは調子の良い時にどう過ごすかです。外来にいらっしゃる患者さん、仕事などではこれができていたはずなのに、自分の健康、ともなるとこれを忘れてしまうケースは非常に多いです。これを機に、見直していただきたいと思います。
年齢がリスクになるのであれば、今の若さをキープできるような生活習慣をすることが大事です。そのためには、ありきたりですが、適度な食事・睡眠・運動、まずこれに限ります。
食事はスマートフォンに食事内容を書き込んで、バランスよくとれているか、カロリーオーバーしていないか、足りない栄養素はなにか、チェックできる時代です。どうしても足りない栄養素はサプリメントで補うことができます。アンチエイジング効果のあるサプリメントと共に、検討の余地があります。
年齢とともに落ちてしまう睡眠の質は、運動すること、サプリメントを摂ることなどで改善が見込まれます。
運動は1日20〜30分が理想、ですが、ジムに通ってまとまった時間をとる必要はなく、自宅で家事など、ちょこまかと動くようにする、通勤中に階段を使用する、一駅手前から歩く、など、日々の生活活動レベルを少し上げて、トータルで1日20分なり30分なりになればOKです。
ピル内服のリスクにつきましては、40歳を超えたらエストロゲンを含有していない内服剤に切り替えれば回避できます。婦人科さんで相談しましょう。
そしてもちろん、普段から、1時間以上座りっぱなしという状態はなるべく回避しましょう。水分は喉が乾いてからではなく、こまめに摂りましょう。1日1〜1.5リットルが理想です。
人間、肝心なのは調子の良い時にどう過ごすかです。外来にいらっしゃる患者さん、仕事などではこれができていたはずなのに、自分の健康、ともなるとこれを忘れてしまうケースは非常に多いです。これを機に、見直していただきたいと思います。
以上、この時期知っておきたい「エコノミークラス症候群」詳しい原因や対策について、お届けいたしました。いかがでしたでしょうか。いきなり全部とはいかなくても、これならできそう、という部分がありましたらぜひ今から!対策していきましょう。